トピックス

テレビCMを作成するとなったとき、「広告主」「広告代理店」「CM制作会社」と多くの会社が関わります。そのため、著作権の帰属問題でトラブルに発展する事も少なくありません。
完成したCMの著作権はどの会社に帰属するのでしょうか。
今回は、テレビCMは誰のものか、CMの著作権はどこに帰属するのか、さらには著作権問題で、裁判になった事例も見ていきましょう。

1：CMは誰のもの？

テレビCMは多くの人がかかわります。
CMを制作するにあたり、関わってくるのは「広告主」「広告代理店」「CM制作会社」の3社です。
テレビCMを制作する流れとしては過去記事「テレビCMが世に出るまでの流れとは？CMが出来るまでの５STEP」で紹介した通り、3社がうまく連携を取りながら、1つの「作品」としてCMを作り上げていきます。

（1）「広告主」「広告代理店」「CM制作会社」テレビCMの著作権はどこに？

では、テレビCMの著作権はどこに帰属するのでしょうか。
実は、著作権についてはしっかりとしたルールがあるというわけではなく、毎回3社で相談して決める、ということになります。
お金を出しているから広告主に、という場合もあれば、制作したのは制作会社だから、制作会社に、という場合もあるのです。
明確に著作権の帰属を決めずに、のちのちトラブルになる事も多いのです。

（2）タレントを起用する場合は？

タレントを起用する場合、そもそも最初から契約時に「契約期間」付きで出演してもらう事になります。
そのため契約期間が「1年」であれば、その期間の間だけCMを流すことが出来る、ということになります。
その期間を超えて同じタレントを起用したCMを流すとなると、契約期間を延長する事になります。
事務所に所属しているタレントをキャスティングするとなると、基本的に契約期間がありますが、それを避けるために、契約期間を持たないフリーのタレントを起用する場合もあります。

2：「著作権の帰属問題」で裁判になった事例2つ

上記に説明したように帰属先がとてもあいまいなCMの著作権。
だからこそトラブルに発展してしまったケースも多いようです。CMを含め、「著作権問題」で裁判に発展した代表的なものを2つご紹介します。

（1）ケーズデンキCM

これは平成23年に、ケーズデンキCMの制作に関与した原告（制作会社A）が、被告らによるケーズデンキCM原版のプリント作成等の行為について、著作権を侵害する行為だと主張、損害賠償を求めた事例です。
被告（制作会社B）はケーズデンキ（広告主）からテレビCMの制作を受注し、これを原告（制作会社A）に下請けに出しました。下請けの原告が制作したCM原版を、被告がコピーしたことから、原告は「自社にCM原版の著作権がある」と主張しましたが、原告の敗訴となりました。
この裁判は、映画の著作権の帰属に関する著作権法の規定を、テレビCMにも当てはめた事例です。

（2）ひこにゃん事件

これは人気ゆるキャラの「ひこにゃん」の作者が、彦根市と400年祭の実行委員会に対して、「ひこにゃん」のイラストの使用中止を求めて民事調停を申し立てた事案です。
TVや新聞などでも大きく報じられました。
大人気になった「ひこにゃん」は、彦根市への使用申請があれば誰でも無料で使えるというフリーライセンス状態だったために、オリジナル３ポーズ以外の「ひこにゃん」グッズが出回りました。これに対して、作者が不服を訴えました。
裁判の結果、市の商標権や男性の著作者人格権を侵害するような事例が見つかれば、互いに報告し、対応を協議する、ということで落ち着きました。
この事件から「著作権フリーだから自由に使える！」という場合でも、一度、著作者人格権の取り扱いには注意したほうがいいことが分かります。

3：著作権の帰属を明確に！

このように著作権の帰属を明確にせずにトラブルに発展するケースは少なくありません。
契約によって、CMの著作権の帰属を明確にしておく必要があります。
はじめてCMを制作する場合は特に入念に、権利処理をしっかりとしておきましょう。

著：HIRONO